あたしは猫として生まれてきた。
生まれて間もない頃捨てられちゃったみたい。
覚えてるのはダンボールの中。
いっぱい鳴いてお腹がすいてもお母さんがそばにいなかったの。

どれくらいたったかなぁ。
人間のオトコの人が来てダンボールから出してくれた。
そのヒトはお花がいっぱい積んである車にあたしを乗せてお家
へ連れて行ってくれた。

花屋さんのご主人で、あたしを見て一目ボレしたんだって。
だけどお店の看板猫に収まるには先輩猫が2匹もいたので、
あたしはまた貰い手を探される不安な日々。

…というのはウソで結構ノンキにお店の飾りリボンでじゃれ廻って
いたかな。お店のお姉さんや猫好きのお客さんに可愛がってもら
ってたしね。

だけど皆との別れは突然やってきた。

あたしの貰い手は少し前に決まっていたけど住宅事情という理由
で引越しが済むまでは連れに来れなかったの。
新しいヒトと逢うのはいつも怖い。この日も車に乗せられて暗い
トンネルをいくつも越えた。あたしは鳴きどおしで疲れてしまった。
初めてのお家、初めての匂い。
人間は二人で先輩猫はいない…。
あたしの目をみて「9ちゃん」と何度も言っている。

この日からあたしは9。
数日でここの先輩猫になった。

ボクのお母さんはチンチラだよ。
真っ白な毛がふさふさして体もとっても大きかった。
お父さんは近くのノラだって。皆が噂してた。
兄弟たちは白かったりボクみたいにトラ模様だったり。
毎日じゃれて遊んで楽しかったけど、いつまでも全員一緒では
いられないんだって。
貰い手探しが始まってボクは一番に選ばれたんだよー。
兄弟の中で一番可愛かったかって?わからないけどそういう事
にしておこうっと。

新しい家には女の子の先輩猫がいてボクに神経質になってしま
ったみたい。
ボクは男の子だから『フーっ(怒)』て言われても我慢ガマン。
小さい頃は歩く時にバランスがとれなくてフラフラ、ヨロヨロ。

トイレでも踏ん張ってウンチした後はヨロけて踏んづけちゃったり。
いきなり抱きかかえられてお風呂場に連れていかれたよ。
ボク濡れるの嫌いなのにな。毛が濡れるとショボくなるんだ…。

そうそう、ボクの名前は「坂本さん」だって。
猫にはめずらしい名前なのかな?
初めて予防接種の時、動物病院の受付で名前を言ったら聞き
返されたよ。これは飼い主のこだわりがあって「坂本さん」のさん
までが名前らしい。今じゃ縮めて「もつ〜」と呼ぶくせにね。

先輩猫の9ねーちゃんは一週間くらいでボクを認めてくれた。
それ以来、大食いのボクがご飯を横取りしても黙って譲ってくれ
たり、毛をなめて整えてくれたり…。やさしい一面があるんだ。

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